社会生活を送っていく中で、人を育成する経験を必ずできるか?
会社へ入り新人が入ってきて、自分がある程度人を教えることが出来る能力がある前提が必要です。
組織は自分の都合で動いてくれませんので、「はい!出来る人、手あげて!」って言われた時に準備できていないと役不足で却下されます。
私は運良く部下を持ちました。それは4人の中国人。
その中国人はまったく日本語を話せないまま中国系企業に斡旋され、来日してきたのでした。
今から5年前、2010年の春のことです。
そんな経験から得た、私なりの「人を育てるコツ」をシェアしたいと思います。
新人は不安の塊、心配で心配でたまらない
一部の有能な人を除いて基本的に新しい職場で従事することは不安がつきまといます。
わたしの場合は「言葉が通じない」中国人。わたしも不安ですが、中国人4人はもっと不安だったでしょう。赤信号みんなで渡れば怖くない!
いやいや、国外に来ているわけです。1人じゃないといっても不安、不安、超不安。
顔合わせの時点からめちゃくちゃ緊張しているのがよくわかりました。しかも彼らは20歳。
彼らの不安な心を払拭するのに1ヶ月近く掛かったのをよく覚えています。
理解その1、新人は不安で覆われている
https://starmetro.info/2014/12/21/china-travel/
技術面より心のケアを第一優先にすべき理由
まずわたしが取り組んだのは「心のケア」文化も違えば、言葉も違う我々。
どうやってコミュニケーション取るかといえば、ジェスチャーと筆談。良かったのは漢字の意味がお互い同じように、通じる事。
最初の1週間、技術面はそこそこに、故郷の話や趣味の話、食べ物の話、日本で行きたい場所の話。
ずっと、彼らについて見聞きしました。
次第に彼らも「わたしが自分たちの事に興味を持ち、色々教えてくれるんだ!」と理解し始めます。
理解その2、親身になる
プライベートを共にすることで手に入れる事ができるもの
日本に来ても言葉を話せないとどこに行くにも不便です。今こそスマホが普及して便利ですが4,5年前はまだまだでした。
わたしは極力時間を作って色々な場所へ案内しました。彼らもそれを望みました。
多分、1ヶ月以上かけて親身になって彼らのことに興味を持ち、仲良くしたからだと思います。この頃には少し日本語もできるようになりコミュニケーションも最初より円滑になっていきます。
使った時間の分だけ彼らは心を開いていくのが手に取るようにわかりました。
春には「お花見」夏には「バーベキュー」秋には「紅葉」冬には「鍋会」。計画的に外にで出て、わざわざ公園でイベントを企画。
みんなで料理したり、時には園内でマージャンしたり(笑)
それはそれは、楽しそうでしたよ。自分がもてなされる側だったら嬉しかったかもしれませんね。
こうやって繋がりを持ってくれる行動を取ってくれることは。
理解その3、心を開くには時間がかかる
技術面を教える土台が整っていると速い!
土台が整ってきたところで、本格的に技術を教え始めます。
わたしの付き合い方が良かったのか、本当に正直に、そして忠実に従います。
一番苦労したのは、日本語で伝えても真意が理解できず違う行動を取ったりするとき。
決して彼らが悪くはなく、わたしの指示がきっと不明確か再確認を怠ったか?のどちらかだと思います。
けれども反復して教えていくとメキメキ頭角を表し、3ヶ月ころには自分の技術の基礎と自信を持ち始め、時折「天狗の鼻を折る」ような行動もしました。
後々聞きましたが、日本語だけでなく技術面はわたしの見えない所で独自に勉強していたんだと。理由を聞いてびっくり。
わたしの期待に応えたい!という嬉しい理由。
理解その4、技術面を教えるには心の土台が必要
日本独特の1を聞いて10を知る行動の教育はかなり難関
一番ハードルが高かったのはリクエスト1個に対して、結果以外の付加価値をつけた行動を取って欲しい時です。
いわゆる「1を聞いて10を知る」
日本独特ですよね。そのくらい分かるでしょ?ってやつ。
中国人って分かってても、要求の激しい人はいるもので「そのくらい」と意味不明なリクエストをします。
ハッキリ言うとわたしでも、「そのくらい」とか分かりません(笑)
けど、そんな事言えません(汗)
言えないとしても、それが日本社会の構造なの。わたしは1個指示に対して1個の結果でOKですが、別の人はそれじゃぁ物足りない。
もっと高級なサービスを!!
そう要求されます。
ゆっくりじっくり、もう幼稚園児に長時間掛けてモラルを諭すように「日本独特の価値観」を教えました。
何度も何度も反論されました。「わたしはそんな指示はもらっていない!」と。
理解その5、外国人は基本的に1個の指示に対して1個の答え
日本文化を伝えるのは不可能だと思っていたが可能だった
大げさに言うと奇跡はおきるものです。もはや「日本独特の価値観」を中国人に伝えることは困難かと思われましたが、段々と行動が変わってきたのです。
すでに、日本に来て1年以上経過しています。
こちらのリクエストに対して、「対案、妙案、ミス改善、別の方針、別のアクションからの比較データ」こんな事まで付加価値として提出してくるようになったのです。
彼ら自身が頑張った成果でもありますが、人を巻き込み中長期でゆっくり育成した結果でもあるでしょうね。
言うことはもうありません。彼らは「日本社会で生き抜くコツ」を手に入れていました。
理解その6、時間を掛ければ文化も浸透する
最後に理解部分の振り返りと感想、後日談
まとめ部分
- 新人は不安で覆われている
- 親身になる
- 心を開くには時間がかかる
- 技術面を教えるには心の土台が必要
- 外国人は1個の指示に対して基本1個の答え
- 時間を掛ければ文化も浸透する
感想
人を育てるには時間がとても掛かります。そして信頼関係なしには人は育ちません。
教えられる側もに人間である以上、自分に好意があった方が嬉しいし、良好な関係の人から教えられれば仕事も楽しみるというもの。その土台を作ってあげるのが教育者のスキルの一部ではないでしょうか?
わたしは思います。人を教育し育てるスキルを持つ人は会社にとって「かけがえの無い人財」なのだと。
後日談
結局彼らはリーマン・ショックの波に飲まれ解雇となり中国へ帰りました。しかし、日本で得た技術とノウハウを持って中国で楽々と再雇用されたのです。
わたしが中国出張の際も盛大にお祝いしてくました。飲めないお酒も大量に飲んでくれました(笑)
自宅にも招かれました。
本気で人を育てて、本気で人と付き合って結果、上司と部下から「無二の友達」になったノンフィクションです。